【高校野球】中越が5年ぶりの秋優勝 日本文理の県内連勝は30で止まる

第131回北信越高校野球・新潟県大会は28日、新潟市のハードオフ・エコスタジアムで決勝戦がおこなわれ、中越が5-2で日本文理をくだし、5年ぶり(10季ぶり)13回目の優勝を飾った。敗れた日本文理は昨春のシード順位決定戦から続いた県内公式戦の連勝が30で止まった。決勝前におこなわれた第3代表決定戦では北越が17-6で巻をくだした。中越、日本文理、北越の3校が10月18日から石川県でおこなわれる北信越大会に出場する。

最後の打者を空振り三振に仕留めマウンド上で喜ぶ中越①上村将太投手

◎28日の試合結果◎
<決勝戦>
中越5-2日本文理
中越 111 010 010 =5
文理 200 000 000 =2
(バッテリー)
中越:上村-波方
文理:八幡-山本
(本塁打)
中越:小林弘(8回・ソロ)

◎戦評◎
中越が先制、中押し、ダメ押しと効果的に得点を奪い、2003年夏の決勝以来11年ぶりに日本文理に公式戦で勝利した。

中越は初回、1死満塁から5番波方の犠飛で先制。その裏、日本文理が3番多賀の適時左越三塁打で同点に追い付き、さらに6番山本の適時打で逆転した。
中越は2回、先頭の7番小林弘の三塁打の後、8番上村の適時打で1点を入れ同点に追い付くと、続く3回にも7番小林弘の適時打で勝ち越した。その後も5回にも1死3塁のチャンスで5番波方の犠飛で1点を追加。8回には7番小林弘の左越ソロ本塁打でダメ押しした。

日本文理は中越と同じ8安打を放ったが中越のエース左腕上村に要所を締められ、2回以降得点できなかった。


1回表、中越が1死満塁から波方凌選手の中犠飛で1点を先制


1回裏、日本文理が3番・多賀駿選手の左越二塁打で同点に さらにこの後逆転に成功


日本文理の先発①八幡竜投手 169球の熱投だった


中越のエース①上村将太投手 準決勝に続く連投で135球を投げ切った


2-2の同点で迎えた3回表、中越が小林弘樹選手の中前適時打で1点を勝ち越し


5回表、中越が1死3塁から犠飛で1点を追加 生還した小林史弥選手(右)


8回表、中越の7番・小林弘樹選手がレフトスタンドへソロ本塁打を放つ


5年ぶりに県制覇を果たし歓喜に沸くスタンドへ向かう中越ナイン


昨春以来の県内での敗戦となった日本文理 北信越大会での巻き返しを誓う

◇中越・本田仁哉監督の話◇
「経験を多くさせてもらっているチームで、優勝して次のステージに行こうというのがまず大きな目標だったので、1つそこが得られて嬉しい。うまく先制できたが、その裏に(逆転され)やっぱり厳しいなと思った。そこですぐ1点を返し、その後3点目を取れて攻撃に厚みが出てきたのかなと思って見ていた。(8回の本塁打は)2点差では文理さんがひっくり返す場面を何度も見てきたので、もう1点ほしいと思っていたので大きかった。上村はこういう舞台で普段通りできたのは褒めてあげたい。選抜甲子園のためにやってきているので、さらに鍛えてレベルアップしたい。特に上村1人ではなく、2番手3番手の投手陣の整備、いろんな形で得点できるようレベルアップして臨みたい。甲子園の舞台に立って、このグレーのユニフォームをもう一度輝かせたいとの思いでやっている」

◇中越・斎藤颯主将の話◇
「1年生からベンチに入ってきて、2年間夏に文理に負けて、先輩たちの分まで返せたのは嬉しい。夏に負けて秋は優勝しようと言ってきた中で優勝できて嬉しい。打撃がいいチームなので打ち勝とうと言ってきた。ダメ押しの1発が欲しい中での(8回の小林弘の)ホームランが大きかった。神宮大会、選抜甲子園を目指して練習してきた。北信越大会でも1位を目指して頑張りたい。OBの人たちの思いもしっかり背負って出場したい」

◆日本文理・大井道夫監督の話◆
「これが今のウチの力。やはり今の力は中越さんの方が上。(8回に打たれた本塁打は)配球ミス。北信越大会に向けて選手の入れ替えをおこなう。(あと3週間で)何とか勝負できるようにしたい」

◆日本文理・八幡竜投手の話◆
「(新チームスタートが遅れ)準備期間が少ないことはあったが、勝たなきゃいけない試合。悔しい。きょうはポイントポイントで防ぐことができる点数があったので、高めにいった甘い球を痛打されたり、先頭を出してしまったり・・・そこを改善すれば2、3点は抑えることができた。北信越まで3週間近くあるので、この大会でできなかった課題をしっかり改善して、力が発揮できるように頑張りたい」



優勝した中越 10季ぶり13回目の優勝で2季ぶり25回目の北信越大会出場


準優勝の日本文理 県内大会5連覇はならなかったが3季連続30回目の北信越大会出場


<第3代表決定戦>
北越17-6巻(7回コールド)
北越 420 504 2 =17
巻高 100 032 0 =6
→北越が2011年秋以来3年ぶり(6季ぶり)10回目の北信越大会出場
(バッテリー)
北越:大塩-月橋、馬場
巻高:小林(俊)、小鷹、長谷川、梨本-長島(高)

◎戦評◎
北越が序盤から巻の投手陣を攻略。コールド勝ちで北信越大会出場を決めた。
北越は初回、走者を2人置いて3番国松が右越え二塁打を放ち2点を先制。さらに長打とスクイズで2点を加えた。1点を返された2回には4番田村の適時打で2点を追加した。
北越は4回にも打者11人による攻撃で一挙5点を加えた。
巻は北越の先発大塩から5回に3点、6回に2点を返し粘りを見せたが、序盤の失点が痛かった。


1回表、北越が3番・国松脩人選手の適時二塁打で2点を先制


巻の先発①小林俊介投手 今大会は安定した投球だったが北越打線につかまった


2回表、北越は4番・田村将太選手が2点適時打を放つ


2番手で登板した巻⑱小鷹樹投手


北越のエース①大塩悠太郎投手


清水一弥監督の指示を聞く巻の選手たち


3年ぶりとなる北信越大会出場を決めた北越ナイン

◇北越・小島清監督の話◇
「課題も多く、やらなきゃいけないことがあるので、次の公式戦があることを喜ばしく思う。打つことばかりで守備と投手がおろそかになっていた。(完投させた)大塩には背番号1を背負っている自覚を持ってもらいたかった。(北信越大会は)文理さんや明訓さん以外の学校でも北信越で勝てるんだというところを見せるのが役割だと思っている。どこが出ても新潟県は勝つというところを達成できなければ新潟県が強くなったことにはならないと思うので、新潟代表として臨むつもり」

(取材・撮影・文/岡田浩人)


【コラム】分岐点の予感・・・秋季県大会決勝を前に

この原稿を書いている時点で日付が変わり、きょう28日に高校野球の秋の県大会が決勝戦を迎えます。中越vs日本文理。今夏の主力選手が多く残り、前評判通りに強打と安定した守りで順当に勝ち上がってきた中越。甲子園でベスト4に進出したことで新チームのスタートが遅れ、手探り状態ながらも接戦をものにし勝ち上がってきた日本文理。非常に興味深い一戦です。

決勝を前に両監督は対照的な言葉を発しています。中越の本田仁哉監督が「この秋は優勝して上の大会に行こうと目標にしてきた」とあくまで県1位という結果を求める姿勢を全面に出しているのに対し、日本文理の大井道夫監督は苦戦続きということもあり「北信越大会に出られるだけで十分。あすは中越の胸を借りたい」と半ば白旗をあげるかのようなコメントを残し、報道陣から苦笑が起きました。確かに準決勝を見た限りでは、投打で圧倒しコールド勝ちした中越と、終盤に辛くも逆転勝ちした日本文理では、チーム状態に差があるように見えます。またお互い北信越大会出場を決めた中で、ややもすると「勝っても負けても北信越大会には行ける」という「消化試合」的な空気がグラウンドやスタンドを覆うことがあるかもしれません。

しかし、僕はこう考えます。ひょっとするとこの決勝戦が、この先、5年から10年先までの新潟県の高校野球界の『覇権』や『流れ』を決める戦いになるかもしれない、と。

僕が高校野球を見始めた1980年代は間違いなく『中越の時代』でした(強力なライバルとして新発田農の存在がありました)。80年代の10年間で中越は4度甲子園に出場。特に85年と86年には夏2連覇を果たすなど新潟県の高校野球界を牽引してきました。

その後、1990年代に入ると新潟明訓や日本文理などの新潟市の私学が台頭。2000年代以降、特にここ最近の10年間の県勢の甲子園での躍進は間違いなく日本文理が牽引してきました。2006年春の選抜初勝利とベスト8、2009年夏の準優勝、そして今夏のベスト4と新潟県の高校野球史を塗り替えてきました。

その間、中越は2003年夏の出場を最後に甲子園から遠ざかっています。中越が日本文理に公式戦で勝利したのはこの2003年夏の新潟大会決勝(中越5-4日本文理・延長11回)が最後。それ以降、中越は日本文理の牙城の前にことごとく屈してきました。最近では昨夏の準々決勝、そして今夏の準々決勝でいずれも1点差で涙を飲んできました。

その中越がこの秋は久々に優勝候補の『本命』に挙げられ、その前評判通り勝ち進んできました。特にこの夏の日本文理への敗戦で、主力だった2年生たちは並々ならぬ決意で真夏の練習に取り組み、「復讐」の機会を待ちに待っていたと思います。

対する日本文理は「練習試合が2試合しかできなかった」(大井監督)と言う通り、新チーム作りが遅れました。大会序盤から選手たちが明らかに実戦(公式戦)慣れしていないと感じさせるプレーを見せてきました。ただし全県、あるいは県外からも有力な選手が集まるようになっている日本文理の試合を見ると、選手たちのポテンシャルはやはり他の高校と比べると一歩抜きんでたものがあります。

大会前、県内の野球関係者からこんな声が聞かれました。「この秋、日本文理が県大会を制することがあれば、この先も日本文理1強の時代が続く」・・・つまり新チームのスタート遅れから準備不足で大会を迎えながらも日本文理が優勝することがあれば、この先も日本文理が新潟県内で勝ち続けるだろう、という推測です。

昨春のシード順位決定戦から始まった日本文理の県内公式戦の連勝は、去年夏、秋、ことし春、夏、そしてこの秋のきのうの準決勝までで『30連勝』の大台に達しました。これは2005年秋から2007年春の準々決勝まで、日本文理のいわゆる「横山・栗山世代」が記録した27連勝を超え、県内の高校球界歴代2位の記録となりました。

そして、その県内公式戦の連勝1位の記録を持つのが、中越なのです。伝説の4番打者・治田仁さんを擁した1985年春、夏、そして新チームになった秋、翌86年春、夏といまだに破られていない県大会5連覇、そして34連勝という県内公式戦連勝記録を今から28年前に打ち立てています。

連勝街道を突っ走る日本文理と、かつて連勝街道を突っ走った中越の2校による決勝戦。奇しくも現在の中越のファーストを守る治田丈選手は治田仁さんの息子・・・新潟県高校野球界の何かしら因縁めいたものを感じてしまいます。その中越が決勝で日本文理の31連勝を阻止し、2009年秋以来の優勝を飾ることができるか。それとも日本文理が中越に並ぶ県大会5連覇を達成し、県内連勝記録をさらに伸ばすことになるのか。

そして記録以上に、この決勝の行方が昨年から続く日本文理1強時代がまだ当分続くのか、それとも中越を始めとした他の学校がその流れを押し戻す形を作るのか。「何とか流れを変える試合にしたい」と漏らした中越・本田監督。そして前述したようなコメントを残していますが人一倍負けず嫌いな日本文理・大井監督。あとから歴史を振り返った時に「あの試合が分岐点だった」というような試合になる予感がします。非常に楽しみな決勝戦です。

(文/岡田浩人)