連合チームだから学べたこと・・・羽茂・相川の長尾貴将主将

初回に6点を先制したものの、中盤に逆転され、結果は8-15で加茂農林に8回コールド負け。連合チームとしての公式戦初勝利はならなかったが、主将の長尾貴将(羽茂)は「連合チームで8回まで野球をやれて誇りに思う」と話した。

ピンチでマウンドに集まる羽茂・相川の選手たち
(右端が長尾貴将主将)

部員不足の羽茂と相川が初めて連合チームを組んだのは去年秋のこと。同じ佐渡市内にある学校と言っても、互いの学校の距離は車で1時間ほどかかる。「最初は羽茂単独で出たいなという葛藤があった」と話す長尾。合同練習は限られた時間しかできなかった。秋の大会は1回戦で7回コールド負け。今春の県大会1回戦でも村上を相手に0-25で5回コールド負けを喫した。

「連合チームで出場していいのか」・・・周囲にはそんな声もあったという。しかし長尾は「見返してやりたかった。連合チームだからと言って決して弱いわけではない」と奮い立った。チーム内のコミュニケーションを大切にした。練習では常に声を掛けあうよう何度も部員に言った。羽茂で生徒会長を務める長尾は、限られた練習時間を大切に過ごした。部員にも時間を大切にすることを呼び掛けた。相川の選手たちとも徐々に打ち解けるうちに、連合チームだから学べることに気がついた。

「羽茂という枠にとらわれず、相川という別の学校に行けるというのは連合チームならではの経験。人間は1人1人に個性がある。別の個性に触れてみたり、普段とは別の人に触れるという経験は大きかった。連合チームだから良かったということはたくさんあります」

試合後に整列する羽茂・相川の選手たち

14日の試合は、5回に集中打を浴び一挙6点を入れられ逆転された。しかし竹内由和監督は「いつもは序盤からミスで崩れていたが、今日はミスから崩された訳ではなかった。外野と内野の連係プレーも及第点をあげたい。見せ場も作ることができた」と選手をねぎらった。長尾は「相手の力が後半上回って勢いを食い止められなかった。でも最後まで全力プレーでできた。今までできなかった連係プレーが本番では十分出せた」と振り返った。

羽茂・相川の長尾貴将主将

この後も部員不足から連合チームを組む学校は予想される。「連合チームだからと言って自信をなくさないでほしい。結果はコールド負けだったが、8回までやれた。去年の夏に羽茂単体で出た時は5回コールド負けだった。一歩一歩前に進んでいる。次につなげることができたと思う」・・・長尾は胸を張って後に続く“後輩”たちにメッセージを残した。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


【高校野球】新潟大会2回戦始まる 雨で6試合が順延

夏の高校野球・新潟大会は14日、雨で順延となった2回戦が始まり、シード校が登場した。第1シードの村上桜ヶ丘、第2シードの新発田中央、第3シードの日本文理、第4シードの県央工が初戦を突破した。
柏崎市・佐藤池の全3試合と長岡市・悠久山の第2、第3試合、新発田・五十公野の第3試合が雨のため中止・順延となった。

◆14日の試合結果◆
<新潟市・鳥屋野>
新発田中央12-1万代(7回コールド)
新潟南4-2新潟江南(試合終了)
新潟商14-4新津工(6回コールド)

<新発田市・五十公野>
村上桜ヶ丘5-0村松(試合終了)
新発田農5-0白根(試合終了)
新発田(中止・順延)新潟青陵

<みどりと森>
日本文理4-1新潟第一(試合終了)
加茂農林15-8羽茂・相川(8回コールド)

<長岡市・悠久山>
松代2-1十日町総合(試合終了)
有恒・安塚(中止・順延)小出
川西(中止・順延)上越総合技術

<三條機械スタジアム>
県央工4-3長岡農(試合終了)
帝京長岡9-0見附(7回コールド)

<柏崎市・佐藤池>
長岡向陵(中止・順延)糸魚川
三条商(中止・順延)柏崎工
長岡高専(中止・順延)海洋

◇日本文理 初戦突破も投打に課題◇
第3シードの日本文理が初戦を突破したが、1回戦で7回参考ながら無安打無得点試合を達成した新潟第一のエース・小嶋諒生を相手に、初回に4番・小黒がタイムリーを放ち先制するも、その後は再三のチャンスに得点を積み重ねられなかった。12本のヒットを放ったものの13残塁。大井道夫監督は「タイムリーが出ない」と攻撃面を嘆いた。

日本文理-新潟第一 日本文理の小黒が1回に先制適時打を放つ

投げては背番号1を背負い先発した2年生の飯塚悟史が、序盤から四球で走者を出すなど課題の制球に苦しんだ。6回には内野悪送球の間に1点を失ったが、この走者も四球で出したものだった。5四死球で被安打は6。「立ち上がりから最後まで制球に苦しみ、自分の投球ができなかった。試合の中で修正できなかった」と反省の言葉が続いた。大井監督も「今のままでは上に行ったら通用しない」と厳しい評価。

日本文理の先発・飯塚悟史

去年秋にエースナンバーを背負い新潟県大会で優勝するも、北信越大会では直前に腰を痛めた影響から制球を乱し長野・松商学園に0-15とよもやの大敗を喫した。春も村上桜ヶ丘相手に四死球で走者を溜め、大量点を与えてしまった。夏に向け制球を磨き、強豪相手の練習試合ではいい投球を見せていたが、「波が多い」(飯塚)と話すように初戦では課題を克服し切れていないことを露呈した形となった。大井監督は「いい球は何球か来ていたんだけど・・・」とエースの復活に望みを託す。飯塚は「夏の大会ということで緊張もあった。次の試合までにやり直したい」と立て直しを誓った。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


【高校野球】15日の試合予定

◆15日の試合予定◆
<新潟市・鳥屋野>
新発田南(9:00)新潟明訓
新潟工(11:30)開志学園
巻(14:00)北越

<新発田・五十公野>
新発田(10:00)新潟青陵
佐渡(12:30)新発田商

<新潟市・みどりと森>
佐渡総合(10:00)新津南
豊栄(12:30)東京学館新潟

<長岡市・悠久山>
川西(10:00)上越総合技術
長岡(12:30)中越
(有恒・安塚-小出は有恒・安塚が選手負傷により棄権。小出の不戦勝)

<三條機械スタジアム>
十日町(10:00)三条東
長岡大手(12:30)三条

<柏崎市・佐藤池>
長岡向陵(9:00)糸魚川
三条商(11:30)柏崎工
長岡高専(14:00)海洋


「まだ野球を好きになれていない」…イップスと闘った新津・山田優気主将

「やるしかないんです」
開会式の選手宣誓で誓った言葉の舞台は、9回二死からやってきた。5-8の3点差。ネクストバッターズサークルで待つ背番号16のキャプテン、山田優気は苦しい思いばかりが続いた3年間を振り返るように、じっとバットを見詰めていた。

新津高校に入学して野球に打ち込んでいた1年秋、突然山田はボールが投げられなくなった。失敗など様々な恐怖心から投球ができなくなる心の病「イップス」になってしまった。
「一時期は練習始めのキャッチボールも、ボールを握るのも嫌でした」・・・この日を境に子どもの頃から大好きだった野球が、己を苦しめるものへと変わってしまった。

「怖い部分があって、正直逃げた時もあった」と振り返る。新チームでキャプテンになったが、投げられない自分への不甲斐なさと闘い続けた。去年夏には部員がランニング中に死亡する不幸な出来事もあった。秋には公式戦への出場を辞退した。主将としてチームをまとめるには余りにも困難な状況が次から次へと山田に起きた。

それでも山田は言う。「いろんなことがあっても、自分たちがやるべきことは野球で、とにかく一生懸命日々を送ることしかないのかと。それを一生懸命やることで、これから先の未来が良い方向に行けばいいとだけ信じてやってきた。付いてきてくれた仲間に感謝しています」
選手宣誓では全ての選手を代表して、思いを表現した。
「人は時に夢を諦めそうになったり、言い訳をして、歩むことをやめてしまうことがあると思います。その回数や挫折の大きさは人それぞれかもしれません。しかし、そこで何もしなければ一向に前に進むことはできません。やるしかないんです」
それは、様々な困難に挫けそうになった自分自身への言葉だった。

佐渡総合との試合はベンチから見守った。1-1の同点から6回表に4点を入れ5-1とリードした。しかしその直後、4連打を許し2点差に詰められると、佐渡総合の1番渡辺に逆転3点本塁打を浴びた。さらに2点を追加され5-8とリードされた。

迎えた最終回、二死から代打で打席に立った。
「自分と交代した選手、ベンチに入れなかった選手、その人たちの気持ちに応えるために次の打者に繋ぎたかった」
真ん中高めのストレートを思い切り振り抜いた。打球は遊撃手の後方に飛んだ。「落ちてくれ」・・・そう願ったが無情にも打球はグローブに吸い込まれた。


相手の校歌を聞く新津・山田優気主将(右から2人目)

試合後、涙を拭いた山田は落ち着いた表情で答えた。
「応援してくださった人たちに勝利で応えたかったが、高校野球ではもう表現できない。申し訳ない。負けたということは、自分もチームももっとやるべきことがあったのだと思う。でも仲間には感謝しています。自分はこのまま悔しい思いをしたまま終わりたくない。この思いをいかして、成長していかなければいけないと思います」

思いもよらぬイップス、そして様々な困難と闘い続けた3年間。
そして、今後も野球は続けるのか?との問いに山田はこう応えた。
「自分はまだ野球を完全に好きになれていない部分がある。だから、野球を好きになって終わりたいんです」
高校野球を終えた山田。だがその野球人生はまだこれからも続いていく。野球を好きになるその時まで、「やるしかない」のだから。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


【高校野球】大会3日目は1回戦8試合 佐渡総合が逆転勝ち

夏の高校野球・新潟大会は12日、1回戦8試合がおこなわれている。


6回裏に逆転の3点本塁打を放った佐渡総合・渡辺健太選手
(鳥屋野 佐渡総合8-5新津)

◆12日の試合結果◆
<新潟市・鳥屋野>
佐渡総合8-5新津(試合終了)
東京学館新潟8-1新潟西(7回コールド)

<新発田市・五十公野>
新発田商7-0新潟東(7回コールド)
巻総合11-1西新発田(5回コールド)

<長岡市・悠久山>
長岡6-0柏崎総合(試合終了)
新潟産大附4-2長岡工(試合終了)

<三條機械スタジアム>
三条東6-2柏崎(試合終了)
高田4-1高田商