けが乗り越えリベンジ果たす…新発田・山田健登投手

最後のバッターを渾身のストレートで三振に切ってとると、高くその左腕を突き上げた。
「気持ちで投げました。県央工には絶対に勝ちたかったので嬉しかった」

3度目の正直、3度目で掴んだ勝利だった。

1年前の夏の新潟大会。シード校を破った新発田は3回戦で県央工と対戦した。2回までに10点を奪い、10-1とリードした。誰もが新発田の勝利を疑わなかった。

しかし、そこから県央工の粘りにあった。当時2年生だった山田は2番手で登板したが、県央工の勢いを止められなかった。追い上げられて降板。試合は9点差を追いつかれ、延長10回の末サヨナラ負け。悪夢のような敗戦だった。

1年前のスコア 新発田は9点差を逆転された

迎えた昨秋の大会も、準々決勝で県央工と対戦した。新チームでエースとなった山田は完投したものの0-1で敗れた。

夏でのリベンジを期していた山田にさらなる試練が襲い掛かる。昨年12月に左肩に痛みを覚え、ボールを握ることができなくなってしまった。

「けがをしてしまって苦しい冬でした」・・・山田は振り返る。

痛みは春まで消えなかった。その間、試合で投げることはできず、地道な練習を積み重ねた。「体幹や階段ダッシュで下半身を鍛えました。ウェートトレーニングで筋肉をつけ、食事を多くとるようにしました。そのおかげで体重が6キロ増えました」・・・体が一回り大きく、たくましくなった。何より「精神的に成長している」と石川浩監督は目を細める。

5月中旬ころから試合に出始めたが、投げ込み不足から制球がままならなかった。しかし、夏への気持ちは切れなかった。1回戦、2回戦と徐々に調子を上げてきた。

迎えた19日の県央工戦では、初回に制球が定まらずに連続四球でピンチを招いたが、そこから圧巻の3者連続三振で無失点に抑えた。これで「いい流れになった」

球の出所が見えにくいフォームで、左腕から伸びのある直球とキレのある変化球を投げ込む。9回を完封。被安打は僅かに2で、奪った三振は14を数えた。昨夏、昨秋と2度にわたって敗れた相手に対して、リベンジを果たした。

19日のスコア 山田は県央工を完封した

「チームで一丸となって、県央工を倒そうと練習してきました。勝てて嬉しい。四死球が多かった(7つ)のが次戦への課題」と話し、反省も忘れなかった。
これで3試合27イニングを投げ無失点。奪三振は44という数を数えた。
石川監督も「彼が投げるとチームがいいリズムに乗れる。山田がしっかり投げるのがウチのパターン」と信頼を寄せる。

「次からはもっと強いチームと当たる。点を取られても最少失点で粘り強く投げたい」
1つの目標であったリベンジは果たせた。ただチームの目標はあくまで「頂点」。甲子園まではあと3つだ。
「どこよりも長い夏にしたい」・・・試練を乗り越えた山田の決意がチームを引っ張っている。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


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