エコスタの“改修”工事 新潟アルビレックスBCの開幕戦に間に合わず

前代未聞、異様な状態でホーム開幕戦を迎える。

新潟市中央区にあるハードオフ・エコスタジアム新潟(以後エコスタ)で12日午後、ルートインBCリーグの新潟アルビレックスBC対福島ホープスの公式戦がおこなわる。毎年、新潟のホーム開幕戦は餅まき大会など開幕を彩るイベントがおこなわれ、親子連れなど大勢の観客が球場に足を運ぶ。去年は約3200人が集まっている。開幕戦は野球選手、チーム、ファンにとっては『お正月』とも言える特別な日である。

この晴れの舞台である開幕戦が今年は異常な状態で開催される。新潟県がおこなっているエコスタの屋根部分の点検・改修工事が開幕戦までに「終わらなかった」のである。バックネット裏や内野スタンドの2層目には大きな足場がむき出しの状態のままで、選手や観客の視界に飛び込んでくる。

エコスタのバックネット裏・2層観客席には大きな足場が組まれている(10日撮影)


外野から見ると2層観客席の4か所で足場が組まれている(10日撮影)

エコスタでおこなわれている工事は3月上旬、一塁側の内野スタンドで始まり、2層スタンドに大きな足場が組まれた。その後、工事はバックネット裏から三塁側まで広がっていった。3月15日からスタートした新潟アルビレックスBCの全体練習(キャンプ)やオープン戦では、例年おこなわれている内野スタンドからの観客の見学・観戦は禁止された。楽しみにしていたファンはやむなく外野スタンドからの見学・観戦を余儀なくされた。

新潟アルビレックスBCで運営を担当する池田拓史専務は「県側から工事のお話しがあったのは2月半ば。既に3月にキャンプとオープン戦を予定していた中でした。4月12日にはホーム開幕戦があり、県からは『開幕戦までには努力します』というお話しをいただいていましたが、その後『4月12日以降も工事が継続する』という連絡をいただきました。こんなにも大がかりな工事になるとは想像もしていませんでした。我々は球場をお借りしている立場なのですが・・・正直戸惑っています」と困惑を隠さない。

足場を移動する作業員 県によると「天井の改修工事」だという

そもそも何の工事をやっているのか。そしてなぜこの時期だったのか。工事の担当である新潟県土木部・都市整備課に取材した。

「工事は屋根の天井の改修工事です。平成27年のシーズンが始まるにあたって施設点検をやっている中で、一部傷んでいる部分がありました。“経年劣化”で修繕をすることになりました」(県都市整備課)

年が明けた後の点検中に天井部分に「傷んでいる部分」を見つけ、その後、修繕と他の天井の点検作業をおこなっているという。工期については、「アルビBCのご理解をいただいて進めている」とした上で、次のように話した。

「作業は4月末までかかる予定です。5月(9、10日)のプロ野球戦(DeNA対巨人)でお客さんにご迷惑がかからないようにと考えています。アルビBCさんについては満席になる訳ではないので、1層目スタンドを使うことでご了解をいただいています。12日の開幕戦についてはロープで観客の誘導をおこなうなど安全対策がとられることになっています。工事の時期については限られた時間の中でやむを得なかったと考えています」(県都市整備課)

  グラウンドでプレーをする選手たちも戸惑いを隠さない。キャンプやオープン戦中は視界に入る場所で作業がおこなわれ、「ファールボールがぶつかるんじゃないかと冷や冷やしながらやっていた」と話す選手もいた。「あのペースでは工事は終わらないんじゃないかと思っていました」と言う選手がいたほどである。

例年、観客入口となっている場所にも大きな足場が設置されている

工事の足場はスタンドだけではなく、球場の外の観客入口部分にも設置され、観客の入場にも影響が出る。池田専務は「あの場所はお客様の入口になる、と県に説明してきたが足場が組まれてしまった」と残念がる。

12日のホーム開幕戦には泉田裕彦新潟県知事も来場する予定。県の担当者は「知事にも工事の件は報告してある」と話しているが、泉田知事はスタンドに足場が残る光景を見てどんなことを感じるだろうか。そして11日の福島での試合が雨天中止になったため12日は新規参入球団・福島ホープスの開幕戦にもなった。福島から来た野球ファンの目に、新潟のエコスタはどのように映るのだろうか。

そもそも、工事をおこなう県側のコメントにもあったように、5月のDeNA-巨人戦に間に合わせることが最優先となり、地元の球団である新潟アルビレックスBCの開幕戦が軽んじられたとしたら寂しい。これがサッカーのアルビレックス新潟の本拠地・デンカビッグスワンだったら県は同じような対応をしただろうか。そして完成から6年に満たない時間の中で「経年劣化」(県都市整備局)が起きるというのは、そもそも建設段階で問題がなかったのだろうか。

この異様な光景の中でのプレーを余儀なくされる新潟と福島の選手と、この日を楽しみにしてきたファンがあまりにも可哀想であり、そして新潟県人として悲しい。

(取材・撮影・文/岡田浩人)


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