【NPB】阪神・渡邉雄大が現役引退 独立リーグ、2度の育成契約から一軍勝利掴んだ苦労人

NPB(日本野球機構)の阪神・渡邉雄大投手(32歳・中越高、新潟アルビレックスBC出身)が1日、現役引退を表明した。NPB一軍で通算41試合に登板し、3勝1敗11ホールドの成績を残したが、今季終了後に球団から来季の契約を結ばないと通告を受けた。自身のSNSで「現役を引退することをご報告します」とファンに伝え、「一日一生、歩んできた毎日に後ろめたさはない」と綴った。今後は未定だが「野球界に関わる仕事をしていきたい」と話している。

現役引退を表明した阪神・渡邉雄大(中越高、新潟アルビレックスBC出身)

渡邉投手は三条市出身で、中学1年生から本格的に野球を始めた。中越高校では3年春にエースとして北信越大会準優勝を飾ったが、3年夏は新潟大会決勝で後に甲子園で準優勝する日本文理に敗れ、甲子園出場はならなかった。その後、青山学院大に進学するが公式戦登板はなく、卒業後に地元の新潟アルビレックスBCに入団。横手投げの変則左腕として変化球の磨きをかけてNPB入りを目指した。

2017年秋のドラフト会議でソフトバンクから育成6位指名を受け、26歳でNPB入りを果たした。3年目の20年8月に支配下選手として契約、9月に一軍デビューを果たした。21年のシーズン終了後に戦力外となった後、阪神と育成選手契約を結び、22年3月に支配下登録を勝ち取った。中継ぎとして4月30日の巨人戦でプロ初勝利を挙げるなど32試合に登板し、3勝1敗10ホールド、防御率2・45の成績を残した。しかし23年は一軍登板がなく、10月に戦力外通告を受けた。11月のトライアウトに参加したが、目指していたNPB球団からのオファーがなかった。

渡邉投手は新潟野球ドットコムの取材に対して以下のように答えた。

Q引退を決めた理由は?
渡邉投手(以下渡邉)「体や気持ちに問題があったわけはなく、シンプルにトライアウトを受けてNPBの球団からオファーがなかったことが一番です。アマチュアを含めてお話をいただいきましたが、NPBでのプレーを望んで必死にやってきて、2度の戦力外通告とNPB球団のどこからもオファーがなかったことで、このタイミングで引退するのが区切りがつけやすく、次に進めると考えました」

Q6年間のNPB生活での思い出は?
渡邉「やはりホークスでのプロ初登板(20年9月4日のロッテ戦)と阪神でのプロ初勝利(22年4月30日の巨人戦)です。初登板は目指していた中でなかなか一軍で投げられることも自分では想像できないようなところもありました。初勝利も中継ぎでワンポイントで巡ってくるチャンスもなかなかない中、勝利投手となってうれしかったですし、阪神の伝統だと思いますがベンチ裏でブルペン陣、キャッチャー陣とみんなで写真を撮ったことが印象に残ってます。ここまで頑張ってきてよかったなと思いました」

Q高校、大学と多くの悔しい思いをした中で、独立リーグを経てNPB入りを勝ち取りました。
渡邉「中学から野球を始めたので周りからはだいぶ出遅れました。高校時代もうまくいかないことが多く、エースになったのも3年生になってから…思い返すと後悔が多い3年間でした。大学でもすごい投手がたくさんいて試合に投げることができませんでした。ただそんな中でも、自分の体の使い方やフォームなど自分で切り開いてきた部分、いろいろな方の指導のおかげで自信を積み上げてきました。独立リーグでは試合で投げられることが楽しく、人生を懸けて野球を続けてきてよかったなと思いました」

2013年11月、青山学院大4年生の時にBCLトライアウトを受験

渡邉「節目節目や岐路に立った時にいい人に出会った野球人生でした。中学ではひじが低い投げ方でしたが当時の監督からフォームをいじられることがなく、高校でも当時の部長から『お前はプロに行って稼ぎたくないの?』と言われて特別メニューを与えられて…その言葉がなかったらプロを意識することもありませんでした。大学も強豪に行くことができ、そこで出会ったトレーナーのおかげで体の使い方を勉強するようになりました。新潟アルビレックスBCでも指導者の皆さんとの出会いが大きく、ギャオス内藤監督、赤堀元之監督、加藤博人監督の投手監督から学ぶことができ、コーチからも打者心理や捕手目線での考え方を聞き、その順番でアドバイスを聞くことができたからすんなり会得できた部分もありました」

2017年10月、26歳で念願のNPBドラフト指名(育成)を受けて涙を流した

Qソフトバンクと阪神でプレーできた経験も大きい。
渡邉「どちらの球団でもリーグ優勝、日本一を目の当たりにしました。自分がその中にいることができなかった悔しさはあるのですが。勝ち続けるチームとしての苦労、伝統あるチームがどう優勝していくのか…常勝軍団であり続けること、常勝軍団をつくっていく過程、両方を見ることができたのはなかなか経験できないことで、今後に生きていくのではないかと思っています」

Q今後については
渡邉「まだ決まっていませんが、今後も野球に関わる仕事をしたいと思っています」

Q新潟の人たちにメッセージを
渡邉「新潟からNPBに入ってくる選手が増えました。高校野球のチーム数が減って心配な部分がありますが、僕のように“諦めの悪い”選手が出てきて、プロで活躍する選手が増えて、新潟の野球界が盛り上がってくれたらいいなと思います。ファンの皆さんには、長い間応援をいただきありがとうございました、と伝えたいです」

(取材・撮影・文/岡田浩人)