新潟大会決勝戦 村上桜ヶ丘×日本文理の見どころ

雨のため1日順延となりましたが、88チームが参加した新潟大会の決勝は、今春の王者・村上桜ヶ丘と、昨秋の王者・日本文理の対戦となりました。第1シードと第3シードの対決で、大変興味深い決勝です。僕が特に関心がある見どころとして3つ挙げたいと思います。①投手の出来、特に立ち上がり②球場の雰囲気③両監督の采配、の3つです。

<ポイント①投手の立ち上がり>
まずはこの夏の、ここまでの両チームの6試合の勝ち上がり、そして数字を比較します。

【村上桜ヶ丘】 打率.313  防御率0.44
2回戦  5-0村松
3回戦  8-1柏崎工(7回コールド)
4回戦  6-0新発田農
準々決勝 2-0新潟明訓
準決勝  9-2新潟工(7回コールド)

【日本文理】 打率.302  防御率1.60
2回戦  4-1新潟第一
3回戦  6-0長岡高専
4回戦  6-3帝京長岡
準々決勝 6-5中越
準決勝  6-0巻

相手は違いますが、打撃は両チームとも3割を超える打率を残しており、数字上ではほぼ互角です。

一方で、投手力は村上桜ヶ丘に安定感があると言えます。特に両チームの投手陣で大きく差があるのが「四死球」の差です。村上桜ヶ丘が6試合で10個なのに対し、日本文理は6試合で23個と倍以上の差があります。決勝も1つの四死球から大きく流れが変わるという可能性があります。特に立ち上がりの投手の出来が1つのポイントとなると言えます。

村上桜ヶ丘の投手陣は、長身エースの椎野投手、左腕の長谷川投手、サイドスローで安定感のある星野投手、という異なる3タイプの投手がいます。中止が決まった後のきょう午前の取材では、椎野投手は「まだ先発は言い渡されていなかった」と話しています。椎野投手が先発する、というのが大方の予想ですが、左腕の長谷川投手が先発し、星野投手で繋いで、最後を椎野投手が締める、というリレーもない訳ではないと思います。

一方、日本文理は2年生エースの飯塚投手、同じく2年生で春にエースナンバーを付けた左腕・小太刀投手の2人ともに制球に課題があります。3年生左腕で準々決勝で好投した大谷内投手、3年生でサイドスローの菅野投手の2人を含めた4人の投手陣の出来、特に先発投手の立ち上がりの出来が試合の1つのポイントになると思います。きょうの取材では飯塚投手は「きのうの時点で決勝の先発を言い渡されていた」と話していて、あすも飯塚投手のスライド先発が濃厚です。飯塚投手の立ち上がりが試合の流れを左右すると言ってもよいでしょう。

両チームが直接対戦した春の県大会準決勝を振り返ってみます。村上桜ヶ丘は椎野投手が先発、日本文理は2年生の左腕・小太刀投手でした。中盤までは桜2-1文理と1点差の好ゲームでしたが、6回に村上桜ヶ丘が文理の2番手で登板した飯塚投手の制球難をきっかけに一挙4点を挙げました。この回に試合の流れが決まりました。結果は7-3で村上桜ヶ丘が勝利を収めました。
この試合で勝敗を分けたのは、日本文理投手陣が出した13の四死球でした。
https://www.niigatayakyu.com/archives/695

あすの決勝も、1つの四死球、1つの守備のミスが、試合の流れを左右する、流れを変える要因になりかねません。両チームとも無駄な四死球を出さないことが勝利へ繋がる道と言えるでしょう。投手の出来、特に立ち上がりがポイントの1つです。

<ポイント②球場の空気>
次のポイントは、あすの球場の雰囲気です。7度目の出場を目指す日本文理に対し、村上桜ヶ丘は村上勢として初めての甲子園出場を目指します。日本文理の応援席を除けば、どうしてもバックネット裏を中心とした球場の雰囲気は、まだ甲子園出場のない村上勢を後押しする空気になるのではないかと想像するのです。

過去の大会を思い起こしてみると、2001年の決勝で十日町と日本文理が対戦した時、初の甲子園を目指した十日町を後押しする球場の雰囲気は独特でした。結果は十日町が延長10回にホームスチールで逆転サヨナラ勝ちしました。日本文理の関係者も「あの時と似たような球場の雰囲気になるのではないか」と警戒し、「アウェーの雰囲気で戦うことになるだろう」と覚悟する声が聞かれました。

ただし、そのことはそのまま村上桜ヶ丘に有利な状況になるのかというと、必ずしもそうとも言えないと思うのです。初の甲子園というプレッシャーが回を追うごとに選手たちにのしかかる可能性はあります。決勝・・・そして村上勢の初出場がかかる独特の球場の雰囲気の中で、両チームが平常心で戦うことができるのか、ここも勝敗のポイントになる気がします。3年生がレギュラ-の中心である村上桜ヶ丘に対し、日本文理はベンチ入り20人のうち11人が1、2年生というチームです。経験豊富な村上桜ヶ丘の3年生に対し、文理の3年生の太田主将や大谷内投手が1、2年生をどう落ち着かせることができるのかもポイントになるでしょう。

<ポイント③両監督の采配>
3つめのポイントは、両ベテラン監督の采配です。

村上桜ヶ丘の松田忍監督は新発田農の監督として3度の甲子園出場経験があります。巨人の加藤健捕手を擁し春夏連続甲子園出場を果たした1998年夏以来の決勝戦となります。村上桜ヶ丘に移って15年目。「もう新発田農の監督をしていた期間(14年)よりも長くなった」とおっしゃいます。「文理、明訓を倒して甲子園に行くこと」をずっと目標に掲げ、公言してきただけに、日本文理との決勝には並々ならぬ闘争心を燃やしています。「正直、きょうはやりたかった」と雨での中止を悔やんでいましたが、じっくりとゲームプランを考えているはずです。「大井さんは実績のある監督。うちは挑戦者」と言う松田監督がどんな仕掛けをしてくるのかが注目です。

一方、監督として春夏10度の甲子園経験のある日本文理の大井道夫監督にとっては2年ぶりの決勝となります。大井監督の采配の特徴は「決断の速さ」です。投手の調子が悪いとみるや、スパッと変える決断力があります。今大会の準々決勝でも、大谷内投手から飯塚投手にスイッチし、飯塚投手の制球が定まらないとみるや、すぐに投手を交代しました。試合後に「俺のミスだった」と話していましたが、ミスを認めてすぐに修正できるのも決断力の1つと言えます。打者も調子が悪いとみるや、1打席で交代を言い渡す、ある意味での「非情さ」も持ち合わせています。今大会は例年の県大会では滅多にやらない送りバントも多用していて、そこには2年ぶりの甲子園出場に懸ける意気込みが感じられます。きょうも取材に対し「ウチは挑戦者だから思い切ってぶつかるだけ」と話していましたが、大井監督の試合中の「決断」にも注目したいと思います。

以上の3つのポイントは、あくまで僕なりの試合を見る上でのポイントとしてご紹介させていただきました。他にも試合のポイントはあるかと思いますが、ぜひ皆さんそれぞれの「ポイント」「見どころ」を試合前に考えながら、あすの決勝を心待ちにしていただけたらと思います。最初にも記しましたが、非常に興味深い、楽しみな決勝です。雨で中止となったため更にもう1日、試合展開を予想する時間を与えられ、余計に思いを巡らせワクワクしています。両チームの選手(応援の皆さんも含め)には思う存分力を発揮してほしいと思います。新潟代表を決めるにふさわしい好ゲームを期待して試合開始を待ちます。長文を最後まで読んでいただきありがとうございました。

(文/岡田浩人)


【高校野球】準決勝第2試合 日本文理×巻 結果

◆試合結果◆

巻      000000000  0
日本文理  00001005×  6

巻)①佐藤
文)①飯塚


巻・佐藤悠人投手


日本文理・飯塚悟史投手

◇日本文理・大井道夫監督の試合後コメント◇

「飯塚はスピードを殺して彼本来のピッチングではないけど今日は合格点。場合によっては継投を考えていたが、飯塚に自信をつけさせるためにもにも最後まで、と思っていたら追加点を取ってくれて、思い切って最後までいけということになった。前半もうちょっと打って欲しかったけど、相手のピッチャーも良かったからしょうがない。5回に1点取ったのは大きい。緊迫した試合で先制点をとられた方の選手はこたえる。先制点が先に巻にいっていたら流れは変わっていたと思う。8回の連打は文理の伝統。それを子どもたちが先輩を見習ってしっかり受け継いでくれている。決勝戦の相手、村上桜ヶ丘は第1シード。胸を借りるつもりでぶつかっていくだけ。椎野投手は変化球がいいし、直球も走っているから、いいピッチャーで、うちのバッターの力を試すにはちょうどいい」

◇日本文理・飯塚悟史投手の試合後コメント◇

「今日は強気でいった。春からゆっくり投げる練習をしてきた。投げ急いでいるところが多かったので『ため』を作って自分のリズムでやりなさいと監督から教わった。そのためにバッターに立ってもらって自分でカウントを設定し、ここでの決め球を自分で考えて思い切って投げる練習をしてきた。今日はグランド整備で間があった後、6回から相手の目先を変えるためにフォークを使った。四球が多いのが課題。詰めが甘い。もっと自分のピッチングができるようにしたい。打撃の方はこの大会で当たっていなくて、大井監督から『思いっきり振れ。気持ちの問題だ』と檄を受け、今日は思いっ切り振っていった。みんなに迷惑をかけてばかりだったので、今日は自分が引っ張っていくんだという気持ちだった。明日の決勝は全ての力を出し切りたい」

◆巻・清水一弥監督の試合後コメント◆
「前半に点を取りたかった。日本文理の飯塚投手は球が荒れていたが、変化球を振らされてしまった。中盤、バッターに打席の立つ位置を変えるなど工夫をさせたが通じなかった。投手の佐藤は最後は単調になってしまい打たれたが、それまでは自分の投球ができていた。センターのエラーがあったが、そこまではみんなでよく佐藤を盛り立てていた。去年は日本文理に勝ち、準々決勝でエコスタに来て満足感のようなものがチームにあったが、今年はそうではなかった。精神的に未熟な子どもたちが失敗を重ねてここまで変わって、成長できた」

◆巻・佐藤悠人投手の試合後コメント◆
「序盤はいい形でできたが、先制されてからずっと流れが向こうで、最後は自分が打たれてしまった。でもみんなが最後まで諦めないで、自分たちらしい野球ができた。(日本文理には)春も負けていて今回こそ勝ちたかったが自分が打たれて完敗だった。(疲れは?)それはなかった。もっと長く野球をやりたかったが、自分が打たれてしまった。最後まで諦めずみんなで食らいついていた。自分の投球に満足はしていない。悔しい方が大きい。(今後は)これから進路を決めたい。ここまでたくさんの人に支えられ野球をできた。自分一人ではここまで野球はできなかったので、感謝の気持ちでいっぱい」

◆先発オーダー◆
<先攻・巻>
1丸山煕 二
2山保海 遊
3安尻善晴 一
4長谷川優太 中
5川畔涼 捕
6笹川隆二 右
7泉田啓彰 左
8佐藤悠人 投
9澤野勇生 三

<後攻・日本文理>
1星兼太 中
2渡辺龍平 左
3飯塚悟史 投
4小黒一輝 右
5渡辺大雅 二
6白石貴誉 遊
7小林将也 一
8鎌倉航  捕
9池田貴将 三


【高校野球】準決勝第1試合 村上桜ヶ丘×新潟工 結果

◆試合結果◆

新 潟 工  0002000   2
村上桜ヶ丘 2141001×   9
(7回コールド)

(投手)
工)①増子→⑱小山→⑧小口
桜)①椎野


新潟工の先発・増子遼投手

村上桜ヶ丘の先発・椎野新投手

3回途中から登板した新潟工⑱小山克巳投手(1年)

◇村上桜ヶ丘・松田忍監督 試合後コメント◇

「あまり序盤から点数が入るとは思っていなかったので、初回に点数を取れて子どもたちが伸び伸びできた。椎野は前回から比べると力みがあったのかな。『この回が大事だよ』と普段あまり言わない言葉を(点数を取られた)4回に椎野にかけたのがいけなかったかな(笑)。(村上桜ヶ丘は初の決勝戦進出だが)やっと決勝にきたなという感じ。明日はメインイベントなんで思い切ってお祭り騒ぎができるという気持ち。子どもたちと春から目指した野球に関しては、要所要所でまだまだというところがあるが、選手たちがうまくやってきたのでここまでくることができた。相手はまだわからないが、接戦の中でどうやって勝つかということ、取られても諦めない。離しても安心しない、最後までいい試合で締めくくりたい。継投についても考えていたが、『星野、次行くぞ』といったところで、試合が終わってしまい、星野をマウンドで経験させることができなかったのが心残り。特別故障している選手もいないので、普段通りの野球ができている。今日は長谷川がいいバッティングをしてくれた、そのまま明日も入って欲しい。明日も椎野先発するかどうかはどうかはこれから考えるが、明日はどちらが出ても、0点で抑える事はできないと思うのでピッチャー陣総出で立ち向かわなければならない」

◇村上桜ヶ丘・椎野新投手の試合後コメント◇

「今日の先発はおとといの試合後に言われました。昨日は軽いキャッチボールとストレッチをした。今日はあまりよくないピッチングでした。浮いた球を打たれてしまった。4回に監督に『この回が大事だよ』と言われて必ず抑えようと思ったが、点数を取った後で少し油断した。最後7回裏の攻撃、2塁ランナーを返そうと思って打席に入ったが、二塁打を打ってもコールド勝ちとは思わず、スタンドの歓声でコールド勝ちだとわかった。決勝戦は村上から多くの方が応援してくれているので明日は必ずいい試合をしたい。気持ちの甘さを出さないように、自分の持っているものを全て出したい。140キロは出そうと思えば出せるが、力んでしまうと出ないので、自分の体と相談しながらじゃあないと難しいですね」

◆新潟工・三田克則監督の試合後コメント◆
「完敗。椎野投手からは想定よりは打てた。(対策は)振ってここまできたチームなので、直球に負けるなと指示した。(準々決勝の)新発田戦よりはやられている感じはなかったので、このまま付いていければと思っていたが、点を取られる方が多かった。ほんの少しの制球ミスを相手が逃さなかった。(4強は)増子が頑張ったから。(14年ぶりとなる)久々の4強で頑張ったと言われているが、甲子園を目指してやってきた。これからもやっていきたい」

◆新潟工・増子遼投手の試合後コメント◆
「エース番号を背負っているのに役割を果たせず、みんなに申し訳ない。絶対に甲子園に行こうと思っていた。(中学の時のように)またみんなと全国の舞台に立とうと思っていた。(初回から)右手人指し指のマメが潰れてしまった。アクシデントはあったが、そこで踏ん張れなかったのは自分の実力。(今後は)この悔しさを忘れず、次の野球に繋げていきたい。社会人でやるのが希望」

◆先発オーダー◆
<先攻・新潟工>
①白井康太 遊
②柄沢拓巳 左
③佐藤和哉 三
④笹川大範 右
⑤小口直弥 中
⑥増子遼  投
⑦江口正義 捕
⑧稲月友輔 二
⑨寺島拓朗 一

<後攻・村上桜ヶ丘>
①須戸吉隆 三
②倉島拓也 右
③長谷川智哉 一
④野澤和希 仲
⑤河内涼  捕
⑥波多野将三 左
⑦松内亮太 遊
⑧椎野新  投
⑨飯野絢也 二

(取材/岡田浩人)


【高校野球】準々決勝4試合 ベスト4決まる

夏の高校野球・新潟大会は21日、準々決勝の4試合が新潟市のハードオフ・エコスタジアム新潟でおこなわれ、村上桜ヶ丘、新潟工、巻、日本文理の4校がベスト4進出を決めた。昨夏代表の新潟明訓は敗れ、連覇はならなかった。

◆21日の準々決勝の結果◆
①村上桜ヶ丘2-0新潟明訓
②新潟工3-1新発田
③巻5-2新発田中央
④日本文理6-5中越

準決勝は23日にハードオフ・エコスタジアム新潟でおこなわれる。
◆準決勝の組み合わせ◆
①10:00~ 村上桜ヶ丘-新潟工
②13:00~ 日本文理-巻

(取材・文/岡田浩人)